着信音の記憶

いつもより赤く感じる夕焼けに誰かを重ねているうちは、

「まだまだだな」と思う。

私はずっと夜が好きだった。

夜は真っ黒で救いようのない心でいても許される気がする。

今にも沈んでしまいそうな夜と心が同化して誰にもバレないで済むから安心する。

それに夜になると誰かが私を欲しがってくれる。

たとえそれが勘違いであっても一人ぼっちからは開放される。

どうしようもない私を包んでくれる、

「知らないままでもいいから」

と未可子は言った。

真っ暗な部屋に一瞬だけスマホの光が灯った。

その一瞬で3:25と表示されていたことと、未可子が泣いていることを確認した。


泣いている「未可子」を確認した男は茫然とした。

彼女が「未可子」であるということを、なぜ僕は知っているんだろう。

どうして「未可子」は泣いているのか。

僕はどうしたらいいんだろう。

「みかこさん??どうして泣いているんですか?」

僕はわけもわからないまま彼女に声をかけた。


「あなたのせいじゃない」

未可子は鳴き声を押し殺した小さな声で呟いた。

男は目の前の未可子のことも、ほんの1時間前のことも覚えていなかった。

ただ、小さな部屋に2人でいること、未可子という女が泣いていることだけが事実としてそこにあった。

「俺のせいってどういうこと?何か気に触るようなことでもしたかな、、」

男は未可子の機嫌をこれ以上逆撫でしないように、できる限り低姿勢で尋ねた。

「いいの。あなたの記憶は私が消したの。せっかく忘れられたのなら、知る必要はないわ。」

未可子は素っ気ない態度で悲しそうに返事をした。


・・・記憶を消した!?・・・

この子は一体何者なんだ。

消された記憶を思い出そうとする俺。

頭が痛い。

思い出そうとすると頭を鉄パイプで袋叩きにされるような衝撃に襲われる。

やばい!これはただ事ではない。逃げなきゃ!

俺の本能がそう叫ぶ。

咄嗟に部屋を見回すが、出口らしきものは、俺の後ろにある扉だけのようだ。

扉を認識した刹那、俺は扉に向かって走り出していた。

扉を開けようとするが開かない!

カギが勝っている。

「どうして逃げるの?」

扉にかじりつく俺の背後から未可子の声がする。

「あなたに危害を加えるつもりはないから、怖がらないで。今は協力してここから抜け出すことを考えましょう。」


「記憶を消したっていうのはどういうことなんだ?」

「あなたの苦しむ姿をこれ以上見ていられなかったのよ。あなたを助けたかったの。それは本当よ。信じて。」

「苦しむって、何に?」

「今は言えないわ。またいつか話せる時が来たらね。」

未可子の目は嘘をついているようには見えなかった。

男はひとまず彼女に従うことにした。

「ここから抜け出すっていうのは?俺たちは誰かに捕まっているのか?」

「いいえ、そうではないわ。私たちがたまたまこの部屋に入り込んだら出られなくなっただけなの。出入り口はそのドアだけよ。」

「どうしてこんなところに入ったんだ。」

「それは、ねぇ、、」

未可子は気まずそうに言葉を濁した。

埒があかないな、、男は未可子のことをどこまで信じていいものか掴みきれないでいた。

テロテロレン〜

突然未可子の持つスマホが鳴り出した。


この着信音は必殺仕事人!

未可子は仕事人好きなのか。俺も中村主水は好きだ。

それはさておき、ここは電波が入るのか。

そうだ!電話だ!これで助かるぞ!

「もしもし、こちらコードネーム未可子、今対応できない。後出かけなおす。」

?????????

わけがわからない。コードネーム?なんなんだお前ほんとに!

でも電波は入るんだ!

「その電話かして!」

俺は突っ込みどころ満載のさっきの未可子の受け答えを聞かなかったことにしつつ、要求する。

「いやよ。貸したらあなたは外に助けを求めるのでしょ?だからいや。」

「どうして!君だって協力してここから出ようっていってたじゃないか!ならスマホかしてよ!どうしてだめなんだ。意味が分からない。」

「あなたが疑問に思うのは当然だと思うわ。だけど、そんな手段でここを出ても意味がないの。」

混乱している俺。悲しげな表情の未可子。

その時である。

扉が一瞬開いた。

その扉の隙間から何かがこちらをにらみつけた!


「テロテロレン〜!」

その扉の隙間から睨みつけてくるのは、妖怪『テロテロレン』だった。

焦る未可子。走りだす中村。

俺は拳を握りしめ、テロテロレンに右ストレートを叩き込む!


ポコーン!

俺の右ストレートを真正面から受けたテロテロレンは、大きく後ろに弾け飛んだ!

「やったか!?」

「いや、まだでござる!」

テロテロレンは俺の右ストレートを受ける瞬間に自ら後ろに大きく飛ぶことで威力を殺していた。

「では拙者が!」

中村が日本刀を抜きテロテロレンへ一太刀!

バサッ

テロテロレンは真っ二つになって倒れた。


「ちょっと待って!あなたたち!これだけは言わせて!」

未可子が真っ二つのテロテロレンにとどめを刺そうとする俺と中村を制止する!

「なに!」

俺と中村の織り成す「なに!」のユニゾン。

「なんか妖怪?これが言いたかったの。」

凍り付く空気。何とかしなければ!空気を読んで俺と中村はどこぞの新喜劇ばりの勢いで倒れてみせる。

俺と中村が倒れた隙をついて、未可子は一人、開いた扉に猛ダッシュ!

「しまった!」

またしても俺と中村のユニゾンが部屋に響き渡る。

扉を閉め、カギをかける未可子。

蘇るテレテロレン。


ここからは、俺と中村が死んだ後の話になる。

扉を閉めて立て篭もった未可子と、蘇ったテレテロレンの戦い。

テレテロレンは未可子を殺したかったし、未可子はテレテロレンを愛したかった。

戦いの結果?

それを聞きたいなら、あなたもこのリレー小説に参加するといい。

あなたの中の未可子と、

あなたの中のテロテロレンが、

あなたの心に美しい花を咲かせるだろう。

〜fin〜

Sarko activity location

誰も完璧じゃないからこそ、ここに存在している事の意味を知ろうとするのである。

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